祭祀財産(さいしざいさん)
家系図、祭具(位牌、仏壇など)及び墓地(墓碑を含む)のように、祖先の祭りのために使用される用具。
民法は、祭祀財産を一般の相続財産から切り離し、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべきものが承継することとしている(民法第897条)。
再転相続(さいてんそうぞく)
相続人が相続の承認も放棄もしないで死亡したため、第二の相続が開始すること。
第二の相続人は、第二の相続の承認・放棄もすることができるが、第一の相続の承認・放棄の権利も相続によって承継する(民法第916条)。
相続債務(そうぞくさいむ)
相続人が被相続人から相続した債務。
相続放棄又は限定承認をしない限り、相続人がそれを弁済する責任を負う。
なお、相続債務が過分の場合、判例は、当然に各共同相続人の相続分に応じて分割されるとする(大審院判決昭和5年12月4日)が、学説は、不可分債務あるいは合有債務となるとするなどの説も有力である。
相続人(そうぞくにん)
被相続人の財産上の権利義務を包括的に承継する者。被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹及び配偶者とされ、子と兄弟姉妹については代襲相続が認められる〈民法第887条・第889条〉。
なお、胎児も、相続については、既に生まれたものとみなされる(民法第886条)。
相続財産管理人(そうぞくざいさんかんりにん)
相続財産法人の財産管理人。相続人の存在が不明なとき相続財産は法人となるが、この場合に、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって相続財産管理人を選任しなければならない(民法第952条)。
相続財産管理人は、不在者の財産管理人と同じ権利義務を負い、管理及び清算をする(民法第953条)。
相続財産法人(そうぞくざいさんほうじん)
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされるが、これを相続財産法人という。相続財産が無主のものとなるのを避ける法律技術上の手段であり、その後相続人が現れれば法人は存在しなかったものとみなされ、相続人が現れなければ、清算、特別縁故者への相続財産の分与の手続を経て、なお残余財産があれば、相続財産は国庫に帰属し、法人は消滅する(民法第五編第六章)。
相続登記(そうぞくとうき)
相続を原因とする所有権移転登記。登記手続においては、遺産分割による所有権取得登記は、被相続人名義から直接取得者名義に移転登記を求めてもよく、共同相続による共有登記をした後に移転登記(更正登記の方法によることも可能)を求めてもよいとされている。なお、遺産分割による相続不動産の取得は、登記なしには第三者に対抗できないとするのが判例である。
相続人の不存在(そうぞくにんのふそんざい)
相続人がいないこと。相続人の存在が不明なときは、相続財産は法人とされ、相続財産管理人にその管理、清算が委ねられる。他方、相続債権者、受遺者の請求申出期間の満了後なお不明のときは、六箇月以上の期間を定めて相続人捜索の公告をし、それでも相続人が現れないときに、相続人の不存在が確定する(民法第五編第六章)。
相続の承認(そうぞくのしょうにん)
相続開始後に、相続人がする相続受諾の意思表示(民法第915条以下)。
相続開始によって相続財産は、一応当然に相続人に帰属するが、相続財産が債務超過のときなどを考慮して、相続人に相続を受諾するかどうかを選択させることとしている。
無限定に被相続人の権利義務を承継する「単純承認」と、相続によって得た財産を限度とする有限責任を負うにとどまる「限定承認」の二種がある。
相続の放棄(そうぞくのほうき)
相続開始後に、相続人がする相続拒否の意思表示。相続の放棄をした者は、初めから相続人とならなかったとみなされる(民法第939条)。
この制度は、相続財産が債務超過である場合に、相続人が意に反して過大な債務を負わされるのを、回避するために認められたものであるが、我が国では、均分相続による農業資産その他の家産の分散を防ぐこと等のために、かなり利用されている。