夫が死亡し、相続人は妻と子供です。夫が生前、自営業をしており、その際、営業が苦しい時に、兄弟からお金を借りたそうです。請求された時に、初めて夫の借金の存在を知りました。その額が高額のため、相続放棄したいが、兄弟から妻なのだから、相続放棄しても返済義務はあるから、払ってくれと言われ、どうしたら良いかわからないという相談事例でした。
「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした時は、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」という民法の規定がありますが、夫が事業のためにした借入はこれに当りません。ですから、相続放棄すれば、債務を免れることができます。
相続放棄した後の懸念事項として、親戚関係が悪化するということが考えられます。ですから、相続放棄した後の、人間関係にも配慮する必要がある旨説明し、それでも、相続放棄するという意思があったので、妻、子供全員相続放棄することになりました。そして、相続放棄の申し立てをし、受理されました。
この事例で気をつけなくてはいけないのは、仮に、この債務が民法761条の日常家事債務にあたる場合は、相続放棄しても、債務を免れないという事態も起こり得るということです。(子は、相続放棄すれば免れます。)